・混み具合(2017.9.18)
・床屋さん、美容院に行けない(2015.6.28)
・神保町界隈(閑談)(2014.10.18)
・過重労働で倒れると(2014.3.14)
・パニック障害が治るということ(2014.2.25)
・電車で急に涙が出てしまう(2014.2.14)
・自律神経失調症について(2013.6.27)
・理由のはっきりしない不眠について(2013.5.25)
・薬に頼りたくない(2012.8.29)
・こんな相談は変に思われるのでは?(2011.11.17)
・親会社から来た上司(2011.03.05)
・潰れる社員、生き残る社員(2010.10.29)
・精神的に弱い人がうつになる?(2010.6.17)
・職場復帰と受け入れ態勢について(第二段階)(2010.2.02)
・職場復帰と受け入れ態勢について(第一段階)(2009.5.15)
・症状をうまく説明できないかも・・・(2009.2.25)
・自宅療養中の経過(特に初期)(2009.2.9)
・休養と職場復帰について(2008.6.23)
・誰でも鬱になり得る時代(2007.11.14)
・比較されることについて(2006.3.15)
・職場の疲労性ストレス(2005.8.11)
・病気療養後の職場復帰について(2005.2.17)
・今年の春は・・・・(2004.6.9)
・風邪から鬱に・・・・・・(2004.2.20)
・外食恐怖症と学校給食の関係(2003.11.20)
・自律神経失調症の空回り状態(2003.9.10)
・面倒見の良い会社、悪い会社(2003.6.6)
・恐怖のお茶出し(2003.2.21)
・ホッとした頃に出て来ることもある自律神経失調症(2002.10.25)
・派遣のお仕事は大変ですか?(2002.7.19)
・人前でのスピーチ(2002.5.22)
・外食恐怖症について(2002.4.3)
・パニック障害は医者が作る病気?(2002.3.1)
・「うつ」・・どの程度なら病院に行くべきか?(2002.2.12)
・朝の吐き気(2001.12.7)
・ノドがつまる症状(2001.11.2)
・気のせいですよ(2001.10.11)
・育児ノイローゼは軽く考えないで(2001.10. 1)
・自殺を考える前に抗うつ剤をのんでみて(2001.9.8)
・心療内科は人生相談もする?(2001.8.21)
・電車に乗れない病(2001.8.9)
・天井クレーンのオペレーターの自律神経失調症(2001.7.24)
・コンピュータ関係の会社は凄まじい!?(2001.7.12)
・睡眠薬は専門医から(2001.6.24)
■混み具合
患者さんからの電話の問い合わせでよく聞かれることですが、何時頃が混みそうですかというのがあります。当院は予約制ではないので正直なところこちらも込み具合は予想しにくいところがあります。意外に混んだり拍子抜けくらいに空いていたりという事がありますので。もちろん一応の傾向はあって金曜日の6時台とか土曜日の10時台とかは混んでいることが多いです。でも常にではありません。お盆休みとか年末年始の休診期間があるとその一か月後は空くことになりますし(2週間おきや1か月に1回で通院されている方が多いので)、天気の悪い日も大体空いています。逆に明日天気が崩れるという日の前日は込み合ったりします。あと連休の前後も込み合う事があります。まあ考えれば当然のことですね。こちらとしては程よく分散して頂けるとうれしいのですが、今のシステムでは仕方のないことですね。(2017.9.18)
■床屋さん、美容院に行けない
こちらとしては日々聞き慣れている相談ごとでも患者さん本人はこんなことで病院に相談に行っていいのだろうかと悩んでしまうことは多いようです。病院どころか友人にも家族にも話せないでいることもあります。そういうものの一つに床屋さんや美容院に行けないという症状があります。仮に行けても必死の覚悟だったりします。それまで何のこともなく普通に行けていた店でいつものように髪をカットしてもらっている途中で急に息苦しくなり動悸、冷や汗、腹痛などがあり、あれっどうしたんだろうと思っているうちに症状はどんどんひどくなり血の気が引いてきて気が遠くなりそうになったりします。でもすぐには席を離れられないので必死に我慢してやり過ごすことになりますが終わって店を出たあとは症状は段々治まってきます。あとになってあれは何だったのだろうと不安にはなりますが幸運にも一回だけのトラブルで終わって忘れてしまう方もいます。しかし多くの場合は後日再び
店を訪れた時に同じような症状に襲われることになります。それが続くとその店に行くと又症状が出るのではないかという不安感が強くなって店に行くことが恐怖になってきます。これはパニック障害であって同じようなことは歯医者さんでも起きます。具合が悪くなってもその場から離れにくい状況であれば(会議とか授業中など)他のいろんな場所で起こってくる可能性のあるトラブルです。
ちゃんとした病気ですし放っておくと症状の出る場所が増えてきて生活上の支障がどんどん大きくなりますので早めの治療が必要です。最初に内科に行ってしまう方も多い病気です。気の利いた内科の先生だといいのですが、運が悪いと精神面を否定されたり軽くあしらわれたりすることもありますので注意が必要です。経験的にはパニック障害は精神的な背景があまりないことが多いように思います。
(2015.6.28)
■神保町界隈(閑談)
当院は名前に九段下と入っていますが住所は神保町3丁目で、昔流に言うと神田地域に入ります。とは言ってもそのまさに端っこで神保町交差点よりは九段下交差点の方が近いので九段下と名乗っているわけです。もう少し神保町寄りのところに城南信用金庫の九段支店がありますので、そう名乗っても問題ないかという言い訳もできます。ところで神保町というと古本屋街というイメージが強いかと思います。でも1丁目、2丁目がその中心でそちらの方は人の流れがとても多いのですが、3丁目は中小のオフィスが中心の小ビジネス街といった雰囲気で昼休みの時間帯以外はぐっと人が少なくなります。ですから当院が開院した15年前頃は土日は人が少なかったのですが最近はこういう場所にもマンションが建ってきて住民が増えてきているようです。普段は比較的静かなところなのですが桜の季節だけは例外で靖国神社や千鳥が淵が近いのでそちらから神保町方向への人の流れが一時的に激しくなります。通り過ぎるだけなのですが。今はなくなりましたが九段下ビルという今にも崩れ落ちそうなレトロな建物が丁度向かいにあって懐かしさを感じさせる一角でもありました。そのビルの外壁には大きな字で中根式速記と書いてあった(速記学校があったらしい)のを消した跡があって更に時代を感じさせられたものでした。でも今は更地になっていて何の風情もありません。ちょっと寂しいです。当院は8階にあるので眺めがよくベランダからは靖国神社の鳥居も見え季節になれば満開の桜も見えてそちらの方向には多少の風情は残っています。江戸の古地図などを見てみますと、この辺りは市ヶ谷方面から九段坂を下りきって俎橋を渡ったところで武家屋敷がかたまっていた地域だったようです。また明治、大正から昭和の途中ころまでは前の道路を路面電車が走っていて前述の九段下ビルとマッチした雰囲気だったのでしょう。周りには高層ビルが少しずつ増えていっています。専修大学まで高層ビルになってしまい、とてもキャンパスとは言えない感じで見下ろされています。でも、昭和世代としては昔ながらの温かみを忘れないようにしていきたいものだと思います。
(2014.10.18)
■過重労働で倒れると
明らかな過重労働で病んでしまった方々をたくさん見てきましたが、さすがに最近は企業側も考えて来ていろんな対策を立ててきています。長時間勤務者の産業医面談や健康診断でのストレスチェック、配置転換やリフレッシュ休暇など10年前とは随分変わったなと思います。でも昨今のベースアップの話と似たようなもので、なかなか末端までは行き渡っていません。人員的にも経営的にも余裕のない会社では今でも身をすり減らしてギリギリのところで踏ん張っていて、いつ倒れてもおかしくないような方もたくさんいます。私のクリニックがある神保町、九段界隈には中小の出版社やIT系企業、広告会社などが多くハードな日々を送っていらっしゃるようです。もちろん大手の企業でもハードワークで倒れる方はいますが、そちらはフォロー体制もあって復活して頑張って行ける可能性があります。でもサポートして行く余裕のない会社ではなかなか復活していけません。戻って来る時は普通に仕事ができる状態になっていて欲しいということが多いので結構厳しいです。それでも正社員であれば傷病手当金の給付を受けながら体調を回復させるというやり方で1年半の時間稼ぎはできるので又転職して頑張るということはできます。でも非正規労働者はそれもできない場合がありますので瞬く間に窮地に陥ってしまいます。ですから普段から自分を健康に保つための注意を怠ってはなりません。やみくもに突っ走ってはいけないのです。
(2014.3.14)
■パニック障害が治るということ
パニック障害は治療開始が遅れると回復するのにとても時間がかかる病気です。特定の場所へ行く事や通勤、通学が困難になって生活に大きな支障を来たします。予期不安⇔パニック発作の出来上がった回路を断ち切るのはとても大変です。実はパニック発作は同じ状況で常に起こる訳ではありません。同じ路線の同じ時間帯の電車に乗っても誰かとおしゃべりしていたり、何か他の事に気持ちが奪われているとそのまま何事もなく電車に乗れる場合もあります。要するに発作を起こす環境がいけないのではなくて、その環境をどう意識するかという事が問題なのです。同じような場面で過去にパニック発作が起こったことや、現在の状況がパニック発作が起きやすい場面であることを意識することで予期不安は強まりパニック発作が起きやすくなるのです。ですから予期不安というのは過去の恐怖体験から自分自身で作り出している亡霊みたいなものとも言えます。とは言ってもあくまでも理屈の話であって、では現実の場面でどう対処するかということになります。SSRIなどの内服によって発作の頻度がかなり少なくなったとしても、あとちょっとのところでなかなか予期不安が消えなかったり、ごくたまには軽い発作があったりで苦労されている方は多いと思います。パニック障害は最後のあとちょっとが難しい病気です。ちょっと動悸がしたり、息苦しく感じたり、なんとなく不安に感じたりして、ああまだ治っていないんだと思ってしまう。問題はこの捉え方ですね。パニック障害ではない人でも睡眠不足で疲れていたり風邪をひていて体調が悪かったりしている時に満員電車に乗ったりすれば気分が悪くなる事は当然あり得ますよね。そうした時にあれっ?どうしたんだろうとか、疲れのせいかなとか思っても一時的で終わってしまいますね。でもパニック障害の人はそうはならない。だめだ、だめだとネガティブサイクルに入ってしまう。ですからパニック障害は状況をどう意識するか、その意識の仕方が変わってしまう病気とも言えます。大事なことは、たまに予期不安があったって、たまに軽い発作があったって決して治っていないんじゃないということです。一時的なことでやり過ごせて居れば、そしてネガティブサイクルに入っていかなければほとんど治っていると言っていい状態なのです。
2014.2.25
■電車で急に涙が出てしまう。
初めてクリニックに来られた方で、通勤の電車や仕事中に急に涙が出てくるということを言われる方がよくいらっしゃいます。特に悲しい事があったわけでもないのに、ふいに変なところで涙が出てきて困ると言われます。そういう方の場合、よくあるのは仕事の量がとても多かったり、常に仕事に追われていて先が見えずアップアップ状態になっている事が多いです。そしてそれを越えてしまうと本格的な”うつ”の状態になってしまって朝起き上がれなくなったり頭も働かなくなって何もかもが悪いほうへ悪いほうへ感じられて来ます。そこまで行ってしまうと回復にかなり時間がかかってしまいますし後々トラウマのようになったりもします。急に涙が出るというのは危険信号である場合もあります。特に我慢強くて自分を責めるタイプの方は状態を悪くしてしまいますので気をつけて下さい。
2014.2.14
■自律神経失調症について
よく言われることですが、自律神経失調症という言葉には誤解が多く混乱している状態です。症状そのものは体の生理的機能を調節している自律神経の中の2つの神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることによって生じてくる体の様々な変調(めまい、動悸、多汗、のぼせ、下痢、呼吸苦、他いろいろ)のことをいうのは共通に認識されていると思うのですが、その原因が様々であるがために誤解を生じているという面があります。うつ病や不安障害などの精神疾患、様々な内科系疾患、婦人科系疾患に伴っての症状として自律神経失調症状が出てくる事も良くありますが、特に基礎疾患がなくて症状が出てくるものを病名として自律神経失調症と言っているようです。ただこれにも異論はあります。その病名としての自律神経失調症の中には元々の体質的なものと過労などの環境因によるものがあります。続けると長くなるのでとりあえず今回はここまでにしておきます。
2013.6.27
■理由のはっきりしない不眠について
当院にも不眠だけの問題でかかられている方が多くいらっしゃいますが、ほとんどの場合は遅くまで頭脳労働をしてしていたり、緊張を強いられる環境にいたり、あるいは交代制勤務で不規則な仕事をしていたり海外出張が多く常に時差ぼけ状態だったり等、原因がはっきりしています。その中で特にこれといった原因の見当たらない不眠の方もいらっしゃいます。その一つのパターンとして眠れないのではないかという不安そのものがストレスになっている場合があります。最初は何らかのきっかけがあって、でも原因がなくなった後も不眠が続いてどうしてだろう、今晩も眠れないのではないだろうかという不安の悪循環にはまってしまっているようです。こういう方の場合は漫然と同じ睡眠薬を服用するのではなく作戦が必要です。外科や内科の先生のところでただ薬を貰い続けるようなことはしないでまずは不眠のパターンを整理する事が必要です。
2013.5.25
■薬に頼りたくない
結論から先に言ってしまえば、一番大事な事は何なのかということになりますが、一つ例を挙げてみます。余り良い例ではないかもしれませんが、うつ症状のある方でお酒を安定剤や抗うつ剤の代わりに使っている方がいます。ほろ酔い気分になっていると自分の置かれた厳しい状況は何も変わっていないにも拘らず気持ちは楽になり、何とかやって行けそうに感じたり、まあいいかと開き直れたりします。でもお酒の怖いのは効果が切れた時にずどーんと落ち込むとか量がどんどん増えて行くとかいう問題がある事です。もちろん酔ったまま仕事にも行けません。反面、適切な量と種類の薬であれば、そういう問題は起きずに厳しい状況の中でもうまく気持ちをコントロールしてやって行くことができます。そうこうしているうちに厳しい状況が好転して来たり、何も変わらないにしても、その状況とうまくバランスがとれるようになって来て薬を減らして行けるようになります。
でも何もしないでいると不安定な精神状態は更に悪くなってしまう。(原因がある場合はそれが解決しない限り)精神的に破綻してしまうと自殺念慮も出てきます。そんな事しなくても何とかなったかもしれないのに、周りに一杯迷惑かけてしまうのに。これは極端な場合ですが、大事なことは周りに対して支障の出ない精神状態でいた方が良いという事です。このままでは乗り切って行けそうにはとても思えない時は薬を使った方が良いと思います。経験のある医師の適切な処方であれば依存したり副作用で体を壊したりということはありません。もちろん服薬の必要の無い方に処方したりもしませんが。
薬を服用することに恐怖感や罪悪感を感じている方もいますが、不安症状にしても鬱症状にしても脳内の物質であるセロトニンとかドーパミンとかが欠乏している状態だと言われています。それならば糖尿病やホルモンの病気で足りないインシュリンやホルモンを補充してやるのと同じ話になるのではないでしょうか。
とは言っても、それでもやはり薬は使いたくないと言われる方もいらっしゃって無理やり薬を出す分けにもいかないですし、そういう場合出しても結局飲まれない事も多いのでカウンセリング的な対処で経過をみているケースも現実にはあります。一方的な押し付けは出来ませんし何と言っても信頼関係を構築できなければ治療にはなりませんから。
2012.8.29
診察室に入って来られた方が開口一番「こんな事で相談に来ていいのかどうか分からなかったのですが」と切り出されることがよくあります。例えば失恋に関する事の悩みとかの場合で本人はありふれた話だからと思うからかもしれません。ただ重要なのはきっかけがありふれた話であっても、その結果として現在どういう精神状態になっているのかという事が問題になります。眠れなくなって日中の仕事に支障が出ているとか食事がとれなくなって体重がかなり減ってしまってふらつくとか、立ちくらみが多いとか、更にひどくなれば自殺を真剣に考えたりする人もいますから、そうなると絶対に治療が必要です。もちろん治療上どういう原因で今の状態が起こって来たかという情報は必要ですが、病院に行くべきかどうかは現在どの程度の症状がどれくらい続いているか、どの程度仕事や日常生活に支障が出ているのか、本人がどれくらい辛いと感じているのかということが問題になります。同じような状況があっても反応の出方は人様々です。比較するのは余り意味がありません。あくまでも当人がどういう状態に陥っているかです。
他に病院に行くべきか躊躇するケースとして症状そのものが変に思われるのでは?とか相談するのが恥ずかしいと感じてしまう場合があります。例えば、おなかの症状、下痢とかにおいとかの悩みも相談しにくいようです。でも長年この仕事をやっていると、初めて聞くような種類の話というのは余りなくて、実際はいろんな方がよく相談に来られていて、こちらとしては何の違和感もないことが多いです。ですから心配しないでかかって頂いて大丈夫です。時に、その背景に本人も気付いていないような別のストレスの影響や潜在的なトラウマかが隠れている場合もありますから。
2011.11.17
最近時々聞く話ですが、やはり景気の関係もあって親会社から転籍になって子会社の上司になるというケースがあります。そうした場合に様々な問題が発生して来ます。それぞれの方の性格特徴によって違ってくるのですが、どの方についても言えるのは本人が望んだ移動ではないということです。
そして有能な人が来ることはあまり無く幾らかの挫折感を持ってやってくる場合が多いようです。不安感も持っています。ちゃんとやって行けるだろうか、なめられるのでは、馬鹿にされるのではないだろうかとか。その一方でプライドも持っているので子会社の社員である新しい部下とギクシャクする状況が発生します。状況はそれぞれの能力と力関係によって違って来ますが、大体は長年その業務をやっている部下の方が仕事を良く分かっているわけで起こってくる問題には幾つかのパターンがあります。
部下に仕事を任せきりにしてしまうパターン、この場合は部下の仕事が忙し過ぎたり現場が混乱したりしていても上司が気付かなかったり何の手も打ってくれなかったりします。逆に、いろいろ見当違いな口出しをして混乱させてしまうこともあります。もっと悪いケースでは部下をいじめることで自分の地位を守ろうとする人もいますが、その逆に気の弱い上司で部下から強烈な反撃を食らう場合もあります。最近は親会社からの転籍は多いようで子会社の社員は、その対応が難しいようです。
2011.03.05
最近は、景気のこともあり、どこの会社も余裕がなく仕事量もノルマもかなり厳しくなっているようです。確かに経営的に厳しければ仕方のない話なのでしょうが、そういう状況であれば、どうしても疲弊してしまって精神的にあるいは身体的に潰れる社員が出てきます。
でも問題なのはそれが会社のために相当頑張った結果であっても、大抵は会社に冷たく見捨てられてしまって潰れ損になってしまうということです。上司は立場上、部下にプレッシャーをかけないといけないのですが、潰れた部下の面倒をずっと見てくれたりはしません。今、転職はとても大変です。われわれはこういう状況に陥った方々の治療をし、何とか職場復帰をさせているのですが、一度潰れると、うまく復職できたとしても本調子に戻るには相当の時間がかかります。一度失ったものはとても大きいのです。それでもうまく復職できた人はまだ幸運です。転職の方向に向かった場合は今の御時勢とても大変です。以前だったら環境が変わって元気にやっているという方も多かったのですが、今は、そうは行きません。治療によって症状自体はかなり良くなっている人も今ここのところでとても苦労をしています。
今よく言われているように予防がとても大切ということです。潰れずに生き残って行くためにはどうしたら良いのかという事です。通院されている患者さんにもよく言うのですが、自分の身は自分で守らないといけない、会社は守ってはくれない、ということです。
もちろんメンタルケアーに力を入れて取り組んでいる会社、常に部下の状況を把握し適切な配慮を行っている上司も世の中には居て、そういうところで仕事ができている、幸せな方も居るのでしょうが、そういう方達は我々の所へは来ないですね。自分の会社、今の部署では気を付けないと潰れてしまう恐れがありそうかどうかをまずよく考えて見てください。
例えばどういう場合に問題が起こるかというと。まず、上司について言えば、上司自身に相当負荷がかかっていて、とても部下を見てやる余裕がないとか、あるいは人格的に問題があって、そもそも配慮なんて意識がない場合とか、親会社から天下って来ていて腰掛の意識しかないとかですね。
職場の雰囲気について言えば、コミュニケーションが無くばらばらで、それぞれが孤立して仕事しているような場合ですね。何か問題が生じても誰にも相談できないし、フォローもしてくれないとか。
自分自身の性格特徴も問題になります。頼まれると嫌と言えないとか、人にお願いするのが苦手とか、手を抜くのが下手とか、頑張り過ぎてしまうとか、貯め込んでしまうとか。でも、こういうタイプの人は真面目で熱心な場合が多いので、できた上司の元ではいい仕事ができるのですが。
逆にストレス社会をうまく乗り切れる社員が優れた社員であるとも言えません。不良社員は生き残る。という場合もあります。こういう会社は悲劇です。面倒な事からうまく逃げる。人に押し付ける。失敗は他人のせい。成功は自分の手柄というやり方で出世して行く人もいます。こういうタイプが上司だったらと思うとゾッとしますが。こういう人は自分は競争に勝ち抜いたんだ。潰れるやつは弱いやつだと大きな声で言ったりするんですね。
各論をもう少し書きたかったのですが、ちょっと長くなってしまったので後日書くことにしようと思います。
2010.10.29
うつは甘えだ!とか気合が足りん!とか声高に言う人が結構います。多分将来も居なくなりはしないでしょう。人間は結局自分の体験でもっていろいろな事を判断するものなので経験のない事は実感できないというのもあり、難しいのかもしれません。実際に診療をしていると、鬱状態に陥る方でも様々な経過、背景がありますが、弱いとは思えない(むしろ強いと言った方が良いかも)ようなケースもよくあります。
例えば、激務による過労状態にある方の場合です。最近は景気の事もあり、会社も少ない人数で回そうとしていて個人にかかる負担も大きくなって来ています。また実際に会社が経営的にぎりぎりになっていて無理をしないと立ち行かなくなってしまう場合もあります。そんな中で連日終電にも乗れないような残業をしたり、徹夜も普通にあったり、さらに土日もほとんど休めず働き続け、風邪を引いて熱があっても休めず。食事も忙しくてよく抜ける、睡眠も4〜5時間とれればいい方で等という生活を数年続けたりしている人が現実にいるのです。それでも成果があり達成感もあり会社も成長していればまだ良いのですが、プロジェクトが行き詰ったり、契約を切られたり取引先が潰れたり、自社の経営もヤバクなって来たりすると、疲労感はつのり、気力は萎え、絶望感、徒労感がどんどん強くなって来るのは当然のことです。しかも、それまで最も頑張って走り続けて来た人ほど、ダメージは大きくなります。要領よく手を抜くとか、早めに白旗を上げることができない、頑張り過ぎる人が結局うつになってくるパターンです。
その他にも、重病、難病に罹患して困難な闘病生活を余儀なくされた方とか、大事な肉親を立て続けに亡くされた方とか、財産を失って生活が立ち行かなくなった方とか、小さいときに信じられないくらいの虐待を受けた方とか、これでは鬱になるのも当然だと思うようなケースに診療をしているとよく出会います。多分、冒頭に書いた精神的に弱い人がうつになると思っている方でも、そういう方々の話を聞けば、考え方はきっと変わるでしょう。
2010.6.17
■職場復帰と受け入れ態勢について(第二段階)
復帰当初は本人のがんばりもあり、受け入れ側の配慮もあって順調に職場に適応して行けたとして、時間的にも定時勤務が可能になるには少なくとも2〜3ヶ月はかかります。もちろんかなり個人差はあって半年以上かかる場合もあります。仮に定時勤務が可能になったとしてもまだ完治というわけではなく、以前の状態と較べると集中力、判断力、仕事の処理能力はまだ落ちたままの状態です。要するに頭が回転しないのです。でも見た目には割りと元気そうに見えてくるので周りからはかなり良くなったように見られがちです。ですから与えられる仕事の質量が増えてくることがあります。本人側もいつまでも甘えていられないということで、つい無理をしてしまいます。周りが遅くまで仕事をしている中で定時で帰るのは結構勇気も要りますし。そうするとまだ本調子ではないわけですから仕事が追いつかなくなり、混乱を来たし、状態を悪化させます。そういう時はかなり早いスピードで一気に崩れる場合もあります。ですからこの段階でも本人も周囲も引き続き慎重な対応が必要になります。元気になって来たからといって無理をしてはいけないのです。ただ問題は職場によってはゆっくり見守って行けるだけの余裕がない場合がよくあることです。特に昨今は景気の問題が大きく影響していて会社としても大変だったりするわけです。
でも、いつかは完全復活できるわけです。もともと人一倍頑張り過ぎて潰れた形の方なら会社としても失うには惜しい人材だと思いますが。
2010.2.2
■職場復帰と受け入れ態勢について(第一段階)
病状が改善し職場復帰のためのリハビリ訓練も行い準備が整っていざ職場復帰といってもいきなり元のように仕事ができるわけでは当然ありません。ちょっと前でしたら「完全に治してから戻って来い。」と無茶なことを言われる会社の方もいましたが最近は産業医の先生の努力もあり、職場の理解も随分良くなっていろいろ配慮して頂けることが多くなりました。とは言っても職場復帰の当初は皆さんびっくりするのですがとても疲れるものです。ほとんど業務らしい事もしないでただそこに居るだけでとても疲れます。一日(あるいは半日)の勤務が終わって家にたどり着いたら玄関に上がったところでつぶれてしまい2〜3時間動けなかったという話をよく聞きます。十分に復帰訓練をしてかなり体力的にも回復したと思っていてもです。多くの場合そんな感じなので自分の体調(疲れ具合)を見ながら徐々に慣らして行く事になります。ですから受け入れ側の会社の方としても、大した事をしているわけでもないから大丈夫だろうと思わないで見守って欲しいものです。
復帰当初は無理をさせてはいけないということで、何もやることがない状況というのがよくできてきます。
実はこの状況はとてもストレスフルなのです。周りの方々が忙しそうに立ち働いていれば尚更です。理想的なのは急がないルーチンワーク的な単純作業を与えることです。(案外そういう仕事はなかったりもしますが)復帰当初の方は不安と緊張の渦の中にいるので何らかの事をして時間が流れるのが理想です。
本人の疲れ具合や不安の程度を見つつ少しずつ時間をかけて慎重に負荷をかけて行くという形になります。この段階がうまく行けば、いずれは定時勤務はこなせて以前の5〜6割は仕事ができるくらいにはなるでしょう。ここまでが第一段階です。ここまでは大概の会社の人事担当の方は理解していらっしゃるようです。もちろんこの段階で失敗してしまうケースもあるわけですが。でもこの次の段階では症状が見えにくくなる分さらに難しくなるかもしれません。
2009.5.25
■症状をうまく説明できないかも・・・
心療内科を初めてかかろうと思った時に自分の症状がうまく説明できるかどうか、うまく医師に伝わるかどうかを心配される方はとても多いようです。というより、ほとんどの方がそういう心配を持ちつつ診察室に入って来ていると言ってもいいかと思います。
そもそもメンタル的な症状というのは自分でもよく分からない何か変な以前とは違う表現しにくい感じなので、うまく言葉にできないのもありますし、あるいは内容がかなりプライベートで初対面の人には話しづらいという場合もあります。
ただ十分に経験のある医師なら、あいまいでまとまらない話であってもポイントは掴めますし、それに対して必要な質問をして症状を整理していく事ができます。医師の側からすれば十分な時間をかけて、患者さんが安心して話せる雰囲気を作りさえすれば診断や治療を間違える事はありません。
しかし大学病院のように時間に余裕のない中で診療をしているところでは十分に話を聞く事が困難な場合もあります。特に初回の診察は大事で患者さん自身がちゃんと話せた、ちゃんと聞いてもらった、かかって良かったと思えるかどうかはその後の治療にとってとても大事なことです。よく言われることですが、患者さんが初めて診察室のドアを開けた瞬間から治療が始まっているのです。ですから初回の診察で医師が患者さんの信頼を得られなかったら医師としてはまずい対応をしたことになります。もし患者さんが思っている事がうまく伝わらなかったと感じたなら、それは患者さんの説明が悪かったのではなくて医師の側に問題があったのだと思います。
それでも実は能力の高い医師は的確に診断し治療を開始しているかもしれません。しかし患者さんの側が不安感(うまく伝わっていないのでは?という)を感じているとその後の治療に影響がでる可能性があります。
もう一つ先程書いた背景にかなりプライベートな問題がからんでいる場合ですが、患者さんにとってはとても深刻なことでも、こんなことを話してもいいものかどうか、変に思われるのではないかと躊躇されたりします。医師の側からすると表に出てきている症状だけでなく、その背景になっている問題も知っていないと治療はやりにくいものです。とは言っても患者さんも話しにくいので、話しやすい雰囲気を作れるかどうかも医師の側の責任になります。
大きな病院などでは診察室の中に看護士や研修医などがいる場合もあります。少数ですが未だにカーテンで区切られただけのプライバシーを保てないような診察室の病院もあります。そういうところではプライベートな話題を持ち出すのは困難でしょう。
大方の場合患者さんがうまく説明できたかどうか不安に感じても経験のある医師なら大体のところは把握できるものです。しかし患者さん自身が医師に理解されていると感じることは治療関係上とても大事なことで、それがないと一方的な治療関係になってしまいます。
治療は、医者と患者の信頼関係が基礎であって、それは同じ目線でのやりとりから作られるものと思います。
2009.2.25
仕事上の様々なストレスで体調やメンタル面の不調を来たして休養に入った人が陥る間違いで多いのは一つには休養に入ればすぐに調子が良くなると誤解してしまうことです。ケースにも拠りますが当初は更に調子が悪くなることもあります。それはそれまで必死に頑張っていた気持ちの張りが切れることによって起こってくるのではないかと思いますが、前もってそういうことが分ってないと不安が不安を呼ぶ悪循環に陥ってしまう事もあります。休みに入った当初は不安で考え方も悪い方へ傾きがちなため、このままどんどんだめになっていくばかりなのではないかというマイナス思考も出てきます。実際には慌てなければ2〜3週間もすれば低め安定期に入ってきます。やる気は出ないがそれ程落ち込まない状態にはなってきます。大事なことは焦らないことです。
もう一つ注意した方がいいのは生活リズムを大きく崩さないことです。一人暮らしの人に時に見られるのですが、極端な場合昼夜逆転になったりします。そうすると通院も服薬もいい加減になり食生活も乱れ結果的に回復を遅らせます。今まで通りにきっちりと、とまでは言いませんが余り生活が崩れないようには注意が必要です。
あとは多少は体を動かし、外の空気を吸う、太陽の光にあたる等もあった方が良いです。余り引きこもり過ぎると余計なことを考える時間が増え、大体そういう時はネガティブな思考になるものです。繰り返しになりますが大事な事は早く治すではなく、ゆっくりとしっかり治すという事です。
2009.2.10
■休養と職場復帰について
職場で様々なストレスにさらされた結果、体調や精神状態が悪化し、出社が困難になった場合、大概は通院しながらしばらく自宅で病気療養を行うという形になります。職場の方でも出社しても仕事にならない状態の方を無理に来させるわけにもいかないので、休んでしっかり治しなさいというふうに指導されるのが普通です。よく患者さんに「どれくらい休めばいいんでしょうか?」と聞かれます。最初に休養を要するという診断書を書くときに、他の病院や診療所の先生方のやり方を見てみますと3〜6ヶ月で書かれているのが多いようです。私も最初はまず3ヶ月休む予定で考えて、あとは経過を見て相談しましょうと話します。もちろん患者さんの病状はいろいろで一概には言えませんが、仕事から離れた環境の中で元気とは言えないまでも、ひとまず落ち着いて生活できるようになるのに早くても1ヶ月はかかります。もちろんまだまだ職場復帰できるような状態ではないので、最初の時点で1ヶ月で復帰しようなんて思っていたら不安と焦りが強く出て症状をさらに悪くすることになります。要するに休みに入って1ヶ月たった頃というのは、仕事のことを考えなければ何とか落ち着いていられるというレベルなのです。もちろん病状によっては1ヶ月たってもこのレベルまで達していない方もいます。
個人差もかなりありますが、休養に入って職場復帰に至るまでには一連の段階があり、それぞれの段階でクリアするべきことがあります。それを着実に上って行かないと、職場復帰には至らないということです。多くの会社の人事担当の方が目にしているように、いったん職場復帰してもまた具合を悪くして出社できなくなるパターンになってしまいます。
職場復帰ができてからもいろいろあります。ちょっと前でしたら、しっかり治して、前と同じように仕事ができるようになってから戻って来なさいなどと、とても無茶なことを真顔で言われる会社の方もいましたが、最近では職場に復帰してからも元のように仕事ができるようになるには、さらに時間をかけて段階を踏んでいかないといけないという会社側の認識も定着してきているようです。
そういうように、休養から職場復帰に至るまでには、十分な時間が必要ですし、その時期ごとのやり方があります。決して楽な道のりではありませんが、時間をかけて地道にやっていく必要があります。ストレスで精神面や体調を崩す人が増えている昨今なので企業側の受け入れ態勢も以前よりはしっかりしてきているようです。今回は総論的に書きましたが、そのうち各論も書いてみます。
2008.6.23
当院の近辺には様々な企業のオフィスがありますので、職場のストレスに起因する症状で来られる方が一番多くを占めています。 ストレスの内容として例えば、仕事がどんどん増えて量が多すぎて追いつかないとか、質的に難しくて対処できないとか、会社に入ったばかりで何も分からないのに周りも忙しくて聞くこともできないとか、クライアントさんの要求が厳しすぎて対処できないとか、あるいは、セクハラ、パワハラ、同僚のいじめとかの人間関係の問題など様々で、そういうもろもろの中で体調を崩すとか、精神的に参ってしまうとかで日々相談に来られる方が多くいらっしゃるわけです。 職場のストレスによるうつ症状は最近とても多くて、テレビや雑誌でもたびたび取り上げられ、一般の方も以前より認識を深めているようです。 やはりそれでも感覚のずれた方はどこの会社内にもいて、そんなの誰にでもあるだろう、気の持ちようだろう、精神的に弱いんじゃないの等の不適切な発言によってさらに追い討ちをかけられたりします。そういう物言いをする方は実は精神的に強いわけでもなく、多くの場合環境に恵まれていたか、単に幸運だったか、面倒から逃げるのがうまいか、自分のほうがずっと大変なんだという思いがある場合です。 程度の軽い抑うつ症状は、確かに誰しも経験をした事がある程度のもなかもしれませんが、実際にクリニックに来られる方のうつ症状は、気のせいとか、誰にでもあるとかいう程度をはるかに超えています。また、自分は精神的にはタフな方だ。うつになんかならないと思ってたという方が自分を過信して、超ハードワークをこなす中でとうとう“うつ”になってしまったというような方も来られます。そういう方は、以前は精神的に弱い人が、うつになると思ってた、自分がなるなんて思っていなかったと、言われます。確かにその方は滅茶苦茶と言えるような仕事量だったのです。本人の意識のこともありますが、最近の会社は余裕のないところが多くて無理をされている方がとても多いです。でも最初はがんばれても状況がなかなか好転しないまま時間が経過する中で、更に仕事が厳しくなってきたりすれば、やる気が落ちてきて気が滅入ってきて妙な考えが浮かんでくるのも当たり前だと思います。 というわけで最近は以前だったら鬱にはならなかったような人でも危なくなってきているようです。そういう意味で大事なのは会社としての予防対策なのでしょう。
2007.11.14
患者さんが、周囲の人(家族や職場の方)にかけられる言葉で、患者さんがとてもストレスに感じる言葉の一つに、他の人と比較した物の言い方があります。これは逆に考えると誰しも、つい言ってしまいそうな言葉でもあります。例えば、「もっと大変な人もいるんだよ」とか、「他の人はもっとがんばっているんだから。」とか、多分わりと気軽に出てくる言葉かと思いますが、これが患者さんにとってはとてもストレスなのです。
一つには、患者さんが現在のつらい状態に至ったのには、それなりの経過があるのに、その言葉をかけた人は、そこまでを判ってはくれてないこと、もう一つには比較してものを言うことは結果的には、がんばれない状態になっている人を非難することになってしまうということです。言葉をかける人にとっては、何とか気持ちを切り替えてがんばってほしいという気持ちもあって、そこから出ている言葉のようでもありますが、その反面無意識に自分だって大変なのにわがまま言うなという気持ちも少し入ってもいるようです。ですから相手には言葉が伝わらないどころか、逆に言われた人は精神的にさらに追い込まれる結果になってしまうのです。
最近は、人が少ない中で一人一人に無理がかかり、皆余裕がない状況の職場が多くなっています。それでなかなか周りの眼も厳しくなってしまう傾向もあり結果として職場全体の雰囲気も悪くなっているようです。そこで状況を変えられる人は、やはりトップの方かと思います。個人差があるとは言っても、世の中に不死身な人はいないわけですから、職場のメンタルケアーに常に気を配る事が大事でしょう。そこで考えるべき事はメンタルを病んだ人を早めに発見するということより、社員が疲れきってしまうような職場にしないことであるのは当然です。最終的にはトップの方に跳ね返って来る事なのですから。
2006.3.15
世の中景気が良くなって来たという話もありますが、とは言っても我々のようなメンタル系のクリニックには仕事に余裕のある方は普通来られないので、皆さん大変そうです。 よくあるのはリストラで人が減って残った人にかかる負担が大きくなるケースですが、ひどい場合は以前3人でやっていたような業務を一人でやるようになったというのもありました。その方は過重な労働から身体的疲労による自律神経失調症状(頭痛,眩暈、動悸、下痢、等)が出現し、仕事に追われる精神的疲労によって抑うつ症状(気力低下、憂鬱気分、等)も伴い、仕事が立ち行かなくなり、結果として、会社は一人の有能なスタッフ、孤軍奮闘していた社員を失うことになるわけです。会社は往々にしてまじめで責任感のある、それでいて文句を言わないタイプの社員を潰すことがあるように思います。大抵は病期療養という形で休む事になりますが、それまでの会社での無理が大きければ大きい程、復帰には時間がかかることになります。これは会社にとっても損失ですから、できれば問題が大きくならないような時点で早めに手が打てるようなシステムが多くの会社内で機能していく必要があるでしょう。
2005.8.11
職場のストレスで心身の不調をきたして長期療養をされている患者さんが療養の甲斐あって病状が改善してくると次に問題になってくるのはどういうやり方で職場に復帰させるかという事です。幸運にして患者さんの勤めている会社の人事課の方や産業医の先生がきちんとしていらっしゃる場合はこちらは楽で、復帰の前に患者さんは会社に呼ばれてどういう形で復帰するか、仕事の内容や勤務時間などをどうするかということを細かく決めて頂けるわけで、そうすると患者さんの不安も負担も軽減し、すんなりと復帰していける事になります。
しかしながらそういう会社はそれ程多くはありません。中には冷たい会社もあります。完全に治ってから復帰して来いと、復帰したら前と同じようにやれと、その仕事をやっていて調子を崩したのにもかかわらずです。そういう対応をされると最終的には退職せざるを得なくもなりますが、ひょっとしたらそれを期待されているのかもしれません。職場のメンタルヘルスについては、きちんとしている会社は増えてきてはいますが、かなり名の通った企業でもお粗末と言ってもいいような会社もまだあります。
患者さんが職場に復帰する時は病状が改善したと言っても長く休養していたわけですから、いきなりフルに働けるわけがないのはメンタル系に限らずどの病気でも同じなわけで少しずつ職場に慣らしていくのは当たり前の事なのですが、それが当たり前にいかなくて困ることもあります。
ただ、その企業のメンタルヘルスに対しての理解の低さもありますが、一方で経営的な問題で(労働基準法に触れるくらい)他の社員にも過酷に仕事をさせている会社もあって、そうなるともう退職するしかないかもしれません。
2005.2.17
患者さんの動きを見ていますと例年春と秋は患者さんが増える季節です。季節の変わり目で何となく落ち着かない頃ですが、春は職場の年度末の忙しさや異動に伴う周囲の環境の変化によるストレスなどなどいろいろ重なってきます。ただ症状はバタバタしていた時期が過ぎてから徐々に出現して来る事も多いので、1〜2ヶ月過ぎてから何となくおっくうだとか気力が出ないとか不眠食欲低下とかが目立ってくることも多いようです。それと今年の場合は五月の中旬〜下旬にかけて天候がとても不順でそのために調子を崩された方が多かったのも特徴的でした。その頃は特に周囲に何かストレス的なものがあったわけではないのに具合が悪くなっていた人が目立ちましたが、天候が影響していると気がついていた人と全然気がついていない人がいました。自律神経失調症の人の中には時に天気予報よりも敏感な方がいて、そういう方は特にきつかったようです。日本は季節の変化があって、それはそれで風情のあるものですが、患者さんにとってはなかなか、それどころではないようです。
2004.6.9
風邪の季節ですが、うつの症状が出てくるきっかけとして、時に風邪をきっかけとすることがあります。最初は普通の風邪で熱もあって喉も痛かったりして、で風邪だなということで薬を飲んで2〜3日も休んでいれば良くなるだろうと思っていたところが、いつまで経っても風邪が抜けない。身体はだるく頭痛もして微熱も続いて、おかしいなおかしいなと思っているうちに段々気が滅入って来て気持ちも暗くなって来たりする。そういう経過を辿る方が時にいます。風邪で伏せっている時というのは、誰しも気が滅入る事はあります。でも大抵は風邪が治れば気分も良くなるのですが、風邪はかなり良くなっても滅入った気分だけ引きずって、いつのまにか鬱がメインになっている事に気付かないまま過ぎてしまい、かなりたってからやっと心療内科へ来られるということがあります。抗うつ薬で症状が改善するわけなのですが、案外気付くのが遅れるようです。
もちろん何もないところに風邪をひいてそれから鬱になるというわけではなく、その前後に何らかのストレスがあったり、もともと気分の変動の目立つ方であったりすることが多いのもあります。
2004.2.20
以前にも書いたことですが、自宅で食べる時は何の問題もないのに外で食べようとすると食べ物が喉を通らなくなってしまうという人達がいます。そういう方達の話を聞いていると外で食べることに恐怖心を持つようになった理由がそれなりにあります。きっかけがいろいろある中で結構よくあるのが、小学校時の学校給食の経験です。その時の給食の内容がどんなものであっても完全に食べ切ることを要求する先生がいて、もし嫌いなものが出ていても全部食べきるまで絶対に許してくれないので常に死ぬ思いでその時間を過ごしていたという経験です。外食恐怖症は嚥下に影響する自律神経の過緊張状態ですので、その時の体験が刷り込まれているようです。でも中学や高校の時はそれ程症状は顕著にならなくて、大学に進学して単身生活を始めたとか、会社員になってとかで外食の場面が増えた時に症状として目立って来ます。外食恐怖症は外食という場面での自律神経失調状態で状況依存性の症状ですから、メカニズム的にはパニック障害に似たところがあります。ですから治療のやり方もパニック障害に似ていて薬剤を補助的に使いつつ行動療法を行うという感じになります。ただパニック障害でよく使われるSSRIだと副作用としての吐き気というのがあるので外食恐怖症の場合は使えなくなります。
2003.11.20
自律神経失調症は、一度症状が出ると悪循環にはまって、なかなか抜けられなくなることがよくあります。その方の元々の性格も影響するのですが、焦れば焦るほど長引いていきます。そうすると、どんどん不安になっていくので病院に行ってみると、いろいろ検査を受けても異常はありませんよ、気のせいじゃないですか、ストレスじゃないですか等々とあしらわれる事になります。症状としては、メマイであったり吐き気であったり喉の詰まりであったり、いろいろですが、とにかく自覚症状が本人にはしっかりありますので、納得がいかない。それにストレスといっても思い当たるものもなかったりで(実は症状が長引いていることそのものが一番のストレスになっているのですが)腑に落ちないということになります。自律神経失調症は大抵の場合良くなります。ただし時間がかかります。まずはじっくり構えられるかどうかがポイントになって来ます。症状自体は危険なものではないのですから。(でも、つらいですけれども)
2003.9.10
患者さんが会社内のストレス(仕事そのものや、人間関係の)で精神的、身体的にダウンした時、休養をとるとか移動させるとか、仕事の負担を軽減させるとか、いろいろな方策をとって症状の改善を図るわけですが、最近は不況ということもあって、どこの会社も余裕がなく現実にはそう簡単にはいかない事が多いです。ただその中でも面倒見の良い会社、悪い会社があって、一部上場の大手企業でもすごく態度の冷たいところもありますし、中小企業でも(経営的に余裕があるという訳でなくても)意外と面倒見の良いところもあります。例えばうつ病の方の場合、自分がうつ病になるとは思わなかった。ということでそこで初めて自分の居た会社の有り難味を感じたり、逆に冷たさを感じたりするわけです。
会社によってのそういう違いはどこから来るのかと考えてみますと、やはりこれはトップの方の考え方ではないかと思います。面倒見が良いということは、裏を返せば会社や周囲の人に負担がかかるということにもなりますから、トップの方がしっかりした考え方を持っていないとできない事かと思います。
2002.6.6
どこのオフィスでもお客さんが来た時などに、お茶出しをする担当の方が居てお茶やコーヒーなどを出していると思いますが、時にこれが重大問題になったりします。極端な場合、このために会社を辞めた方もいましたので・・・・。 いつもは何気なく微笑みながらやれていたことが、ある日急に恐怖の時間に変わってしまうのです。ある方の場合はこうです。いつものようにコーヒーを持っていったところ、お客さんの前のテーブルに置こうとした時になぜか(体の位置の関係でたまたま置きにくかった?)ガタガタお盆が揺れて少しこぼれてしまった。すみませんと言ってあわてて戻ってコーヒーを入れ直してテーブルに置こうとすると何故か又ガタガタ揺れてお客さんにも変な顔をされてしまい「参ったな、どうしたんだろう」と思いつつその日はそれで終わりました。ところが翌日からはお茶出しの時に何故か妙に意識してしまって手ががたがたカップはガチャガチャ音をたててしまうのです。「いけない、落ち着かなきゃ」と思っても逆に心臓ドキドキとおかしくなってしまい、その日から恐怖のお茶だしに変わってしまったのです。上司からは「どうしたの気楽にやってよ」といわれても、その場面になると手が震えてしまいうまくお茶をだせなくなってしまったのです。そうすると今度は寝ても覚めてもお茶だしの場面ばかりが思い出されて考えただけで憂うつになり明日仕事に行くのが嫌だなあと考えたりしてしまいます。特に気を使うお客さんが来るときなどは不安でしかたがなくなってしまいます。最初はちょっとしたきっかけがいったん悪循環にはまると、とてつもなく大きなストレスになってきます。こういう時は事情をそのまま話してしばらくお茶だしをやめさせてもらって、ほとぼりをさますのがいいのですが、周囲の(上司の)無理解や本人がこんなことでと恥ずかしがったりして、つまらないストレスで精神的に追い込まれたりします。それで仕方なく安定剤を使ったりする人もいるのですが、それはそれなりに効果はあるのですが、普通はお茶だしだけのために会社に入ったわけではないでしょうから、しばらくの間は他の仕事に集中するのが一番いいのですが・・・。
2003.2.21
とても忙しい時期が続いてそれが一段落してホッとした頃に疲れがどっと出てくるというのは、よくある話ですが、疲れと共に自律神経のバランスを崩してメマイや息苦しさ、動悸、ほてり、倦怠感などの自律神経失調症の状態になることがあります。一度出現すると自律神経の症状は結構長く続くので、不安になった患者さんは内科を受診して検査を受けたりするのですが、多少肝機能なんかが引っかかる事もありますが、何の異常も出て来ないこともあります。気の利いた内科の先生だと、以前の疲れのせいだから大丈夫です。段々体調は戻って来ますよという事でうまく対処して頂けるのですが、これが気のせいでしょうとか、ストレスのせいでしょうとか言われると患者さんは首を傾げてしまうようです。要するに今はストレスがなくなってほっとしたところだし、気のせいと言われても体調はこんなに悪いのに変だなと。自律神経失調症は一度出現すると結構しつこいので患者さんは変だな変だな、やはり何か悪い病気にでもなったのではないかなと心配になりますし、そうしているうちに症状そのものがなかなかよくならない事がストレスになって二次的にうつになったりもします。
仕事がとてもハードな時期が続いてという場合もありますが、家族に重病人が出て看病が大変な時などの場合も同じで、その時はずっと気が張っているので相当無理をしていても案外疲れを自覚しなかったりするのですが、それが一段落した時はかなりの疲労が残っており体調を崩すことが多いようです。
内科的にきちんと調べてそれ程の異常がないのであれば、心配はないわけですし基本的には疲れのせいですから、無理をしないようにして気長に様子を見ていれば徐々に体調は戻って来るはずです。ただ回復に要する時間はかなり個人差がありますし、新しい別のストレスが加わってくると状況は更に複雑になって来ますが・・・。治療については対症療法的に症状を緩和する薬を出したりもしますが、基本的には時間が必要ということになります。
2002.10.25
来院される患者さんの職種をみていると傾向がありまして、いわゆる情報関連産業の方が多いような気がしますが、それとは別に職種というより雇用関係の問題になりますが、派遣で働いている方々(ほとんど女性ですが)のストレス関連疾患も結構目立つように思います。たいていは事務職でやられていることが多いようですが、しょっちゅう仕事環境が変わるので、まず新しい職場の雰囲気になじむのが大変のようです。実際にやる仕事についても早く慣れて早く結果を出さないといけないプレッシャーもあり、またそこの会社の正規の職員よりも仕事の量や質の面で負担が大きかったり、微妙に立場が違うので他の社員と今ひとつなじめなかったりということもあるようです。要するに派遣で仕事をやっていくには向き不向きがあるのでしょうけれども、好きでやっているわけではないので大変のようです。症状の内容はうつ症状が目立つ気分面のものから自律神経失調症的な体調面の症状など様々ですが、幸か不幸か派遣の場合は、それぞれのストレス環境での仕事には期限があるので、とりあえず、きりのいいところまで我慢できればということもあります。本当はそこでしばらくゆっくりして体調を整えられるといいのでしょうけれど、経済的な問題で具合の悪いまま又別の会社での仕事を始めなければいけないということもよくありまして、その場合は体調の悪さを次の会社に引きずることになってしまいます。
2002.7.19
■人前でのスピーチ
仕事上や社交上の場面でスピーチをするというのは多くの人にとって気の重いものです。何日か後にそういう機会がある場合、その前日まで憂うつで、さらに直前になれば心臓ドキドキ足は震えてという状況になり、しゃべっている最中は顔が引きつり舌はもつれ、それでも何とか終わればホッとしてどっと疲れが出る。そういうパターンの人は多いでしょう。普通の人は緊張する場面でしゃべるという事はしょっちゅうあるわけではありませんし、仮にちゃんとしゃべれなくても、それ程大きな支障はないのですが、これが仕事に関係してくると事は重大です。
職場の朝のミーティングや会議やデモ、取引先との交渉などの場面で過度に緊張して大事なことがきちんと話せなかったりするとこれはまずいことになってきます。昨日まで十分に準備していたはずなのに、いざという時に頭の中が真っ白になって、しどろもどろになったり、変な日本語で何を言っているのかわからないような状態になってしまったら、せっかくの能力を発揮できないばかりか、その人の評価はかなり下がってしまうでしょう。
そういう悩みで相談に来られる方は結構います。そういう場合はどうするかというと、緊張する場面の前だけ安定剤を服用して頂くというやり方をします。そうすればそれ程緊張することなくその場に臨めるようになります。抗うつ剤を使った方が気持ちが前向きになってうまくやれる場合もあります。(ただ薬が強すぎると眠気が出ますので薬の選択、組み合わせは微妙なところがあります)普段の生活や仕事では何の問題もないなら、それ以外の場面では薬はいらないわけです。就職の面接の場面等でも有効かもしれません。
こういう悩み事を相談に来られた人がよく言われることで「これは病気ではないから病院に来るのはどうかなと思った。」とか「気の持ちようかとも思う」。とか「慣れの問題か」という発言をよく聞きますが、事は急を要するでしょうし、例えば頭の痛いときに頭痛薬、お腹をこわした時に胃薬という発想で緊張した時に安定剤と、そこは簡単に考えて頂ければ理解し易いかと思います。
2002.5.22
家で食事を摂るのは全然問題がないのに外のレストランなどで食事ができないという症状があります。食べようとしても吐き気が出てきたり、胸が詰まって苦しくなってきたりして食べ物が全くのどを通らない状態になるのです。あるいはその日外食の予定があるというだけで朝から、ひどいときは数日前から症状があったりします。緊張する人との会食に限ってだめな人もいますし、気の許せる友達と一緒でもだめな人も、又一人での外食もだめな人もいます。そういう人達は外食という場面でなければ、どのような人達とも普通にしていられるので、対人関係の緊張というよりは外食という状況そのものがだめなようです。これは言ってみれば条件反射のようなものでレストランなどに入ると、あるいは入ることを想像するだけで自律神経反射(副交感神経反射あるいは迷走神経反射)を起こして胃〜食道が過度の緊張状態になってしまうのです。過去に外食(あるいは類似の)場面でそういう症状を経験してから、又なるのではないかと(体が勝手に)意識するところから始まるのでパニック障害に似たところがあります。こういう症状には軽い安定剤と副交感神経抑制剤の併用が効果があります。外食以外では何も問題がないので外食の前にだけ薬を服用していけばいいことになります(症状の重い人の場合は多少違ってきますが)。自律神経の過敏状態ですから精神的な問題(ストレス、悩み等)が何もない人でもこういう症状になることはあります。でも普通は放っておいてもなおりませんし、外食が出来ないことで困ることはとても多いはずです。最初は薬の助けを借りて何とか症状を抑えているうちに体が勝手に意識する事が段々少なくなっていって、徐々に治るという具合です(もちろん全ての人がこう簡単に行くわけではありませんが)。
2002.4.3
■パニック障害は医者が作る病気?
パニック障害という病気はまさに現代病というところがあって絶えず混雑した都会では発症のきっかけになるような場所がいたるところにあります。よくあるのは満員電車の中などで、急に具合が悪くなって(激しい動悸、呼吸困難、腹痛などで)怖い思いをするということから始まるのですが、そういう場合、多くの人は近くの病院に駆け込むか、あるいは救急車で運ばれることになります。ただその人が完全なパニック障害として出来上がるかどうかは、最初に対応した医者によって大きく左右されるところがあります。というのはこういう患者さんは、とても激しい症状を経験したにもかかわらず、病院に着いたころには症状は全く治まっており、診察しても検査しても何も異常がないことが多いので、パニック障害のことをよく知らない医者にたまたま当たったりすると患者さんはひどい扱いを受けることがあるのです。「何ともありませんよ」「気のせいですよ」とか、もっとひどくなると「なんで来たの」「こっちは忙しいんだよ」と相手にされなかったり、もっとひどくなると、うそつき呼ばわりされて追い払われたような人もいて、いたく傷つき、医療不信に陥ったりするのです。大抵は時間外か救急外来を受診することになるのでパニック障害の専門の医者の診察を受けるということは最初の時点ではまずないのです。
そうした場合に患者さんの側としては、まず怒りの気持ちもありますが、あの激しい症状は何だったのだろうと、あんなに苦しかったのに何もないはずはないし、でも医者は全然相手にしてくれない、きっと見落としているに違いない、そうすると又発作的な症状に襲われるかもしれない、でも医者は相手にしないということで八方塞がりになり恐怖感におののいて、又なるのではないか、また苦しくなったらどうしようと、・・・こうして完全なパニック障害が出来上がってくるのです。これがもし多少なりともパニック障害のことを知っている医者が最初にみれば適切な指導、対応ができて患者さんは恐怖感にとりつかれることなく、発作も繰り返すことなく経過してパニック障害の状態にまではならないで済むので、そういう意味ではパニック障害は医者が作る病気ともいえるのです。昔にくらべればパニック障害はかなり有名になりましたから、名前だけは知っている医者は多いのですが適切な対応となると、まだまだ怪しいところがあります。ただ医者の側にも言い訳もあって忙しい時間外の救急外来でてんてこ舞いしていると、とても時間をかけて説明をすることができないということもあるかもしれません。隣に死にかかっている患者さんがいて懸命に救命処置をしている時に、検査しても何も異常がない人がいたら、多分放っておくか、追い返してしまうでしょうから。もしその人がうるさく何か言ってきたら、怒鳴りつけたくもなってしまうでしょうから。そういう場合でも、少なくとも、こういう病院のこういう先生のところに明日行きなさいとだけでも言ってくれるといいのですが、とは思います。
2002.3.1
最近は景気が良くない事もあって職場でも家庭でもプライベートな場面でさえもストレスがあふれている状況です。こういう時代ですから一時的な「うつ」症状を経験する方はとても多いと思います。ただ、どの程度だと病気なのか、そして病院に行くべきかというとなると一般の方は判断に迷ってしまうのではないでしょうか。取り敢えず病院に行ってみて医者に判断してもらうのが一番手っ取り早いのですが、病院というところは敷居が高く感じられるかもしれません。個人のレベルでの判断となるとそれぞれの感じ方や評価基準が違うので一概には言えないところもありますが、一つの目安として私見を述べてみます。
「うつ」症状というと気分が沈み、意欲がなくなり、何をしても面白くなく、不眠(特に早朝覚醒)、食欲低下等の症状が出てくるわけですが、一時的に経過する場合もあります。調子が悪くても何とか必要最低限の事ができていればいいのですが、これらの症状のために日常生活や仕事の遂行に大きな支障が出ていて、そのひどい状態が2週間以上続いているような場合は病院に行くべきだと思います。大きな支障というのは、充分に睡眠がとれないために疲労感が継続している、翌日に眠気が残り仕事に集中できない、朝会社に行きたくなくて遅刻や欠勤が毎週のようにある、仕事が進まない、仕事にならない。あるいは家庭内で家事をやる気がしない、家事がすすまない、整理がつかない。一日が長く感じられ、つらく、苦しく、イライラしたり感じる時間が多い。休日は家にこもって外出する気にもなれない・・・・。このような症状が2週間以上続いている場合は(症状に波があって途中少し良くなったような時があったとしても)病院にかからないとどんどん症状を悪くなって行く事が多いのです。仮に「うつ」になっている原因が分かっていて、それは環境や相手が原因であって自分の責任ではないという状況であっても、上記のような程度にまで状態が悪化していれば病院に行った方がいいと思います。そしてその結果「うつ」症状が消えた時には「ああもっと早く病院に行っておけばよかった」と思うはずです。
2002.2.12
■朝の吐き気
朝というのは身体的にも精神的にもなかなか調子が出てこない時間帯で特に低血圧症の方はエンジンがかかって来るまでに結構時間を必要とするようです。低血圧でなくても「うつ」の症状があるとやはり朝の気分や体調は悪くて、お昼頃になってやっと調子が出てくるという感じになります。そんな朝の体調の悪さの中の一つの症状として「吐き気」というのもよく見られる症状の一つです。朝眼が覚めた時から気持ちが悪い場合もありますし、家を出る頃や電車に乗ってから気持ち悪くなってくる場合もあります。毎朝こんな調子ではとても大変ですからこれは治療が必要です。ただはっきりとした胃、十二指腸潰瘍などがある場合もありますから、最初は消化器内科にかかった方がいいでしょう。そこで診てもらって検査の結果それ程の胃壁の変化はないと、それでも吐き気は続くということなら自律神経失調症かうつ症状かパニック障害か、と考えられます。原因としてそれなりのストレスがある場合もありますが、もともと胃腸が弱い方とか自律神経が敏感な方などでは、それ程のストレスがないこともあります。よくある誤解に、こういう症状があるのは精神的に弱いからだと思ってしまうのがありますが、むしろ敏感で繊細な人がなる症状であって鈍感な人はならないのだと考えた方がいいと思います。
2001.12.7
ノドがつまる、つっかえるという症状で受診される方は意外に多くて、大抵は内科や耳鼻科で繰り返し診てもらって検査もされて何の異常もなくて気のせいですよなどと言われて心療内科へ来られるわけです。実はこのノドがつまるという症状は、我々の専門の教科書にもちゃんと書いてあって昔からそんなに珍しくない症状だったようです。でも最近多いですね、このノドがつまる、つかえるという症状が。内科や耳鼻科で内視鏡やレントゲン検査を受けて何ともなければ取りあえず安心していい訳ですが、ここで問題なのは、その時に診察した医師の説明の仕方にあるように思います。ストレスの影響かも、あるいは自律神経の関係かも、ということで心療内科にかかってみてはいかがですか?というように説明して頂ければ一番無難で患者さんも次の行動がとりやすいのですが、検査をしても異常がないからといって“気のせいですよ”とか“気にし過ぎですよ”とか“何の心配もありません”と言ってしまうのは問題があります。医師の側からすれば患者さんを安心させてやろうという気持ちもあるのでしょうが、この(検査で異常がなくて)ノドが詰まるという症状は意外としつこい症状なのです。ですから患者さんの側からすると医者はああ言ったけれども症状は一向に良くならない。とすれば何か見落としがあったんじゃないか、ヤブ医者じゃないかとか考えてしまって、医者は技量を疑われることにもなりかねません。でもこのしつこい症状も薬物療法とカウンセリングによってかなりよくなるのです。ただ心療内科をやっていて面白い(というのは失礼な言い方かもしれませんが)と思うのは、薬を処方するにしても、きちんとカウンセリングを併用するか、しないかで薬の効き方がかなり違ってくるということです。やはり生身の人間なんだなあと思います。
2001.11.2
心療内科のクリニックに来られる初診の患者さんの大半は、こちらに来られる前にいろいろ身体面の診察及び検査を受けられていて、そこで気のせいですよと言われている事が多いので既にいたく自尊心を傷つけられているようです。それで診察室に入って来られる時は意気消沈している様子が見て取れますし、自分は何か普通の人がならないような変な病気になってしまったのだろうか、精神的に弱いのだろうかとか、はたまたそういう自分の他の人と違う弱い面を医者にズバリと指摘されるのではないだろうかと戦々恐々としているようです。しかし我々は日常の仕事の中で、電車に乗れない人も、ノドが詰まる人も、人前で手が震える人も、動悸が止まらない人も、戸締りを何十回も繰り返す人も、下痢や便秘を繰り返す人も、緊張するとお腹がごろごろ鳴ってしまう人も、人の視線が気になって仕方ない人も(書いていたらキリがない)いつも診続けているので、どんな症状であっても珍しくも何ともないよくある症状と理解しているのです。ただそういうのを見慣れていない内科や外科やその他の専門科の先生方だったらきっと変なものでも見るような感じで患者さんを見てしまうでしょうね。でもそれって結構トラウマになってしまって医療不信になったりするんですね。“気のせいですよ”と一般の先生方はよく言われますがそんな非科学的なことは絶対なくて、何らかの機能異常、過敏症状、失調症状がなせるわざだと思うのですが、心療内科の分野でも“心”を重視して考える事が必要な場面と“心”にはほとんど問題のない種類の自律神経失調症もあるのだと、もっとはっきり分けて考えるべきだと私は思っております。
2001.10.11
育児ノイローゼは産褥期精神病ともいい出産前後に出現してくる精神的なやまいです。内容的には抑うつ症状が目立つケースが多いですが、時には幻覚妄想を伴ったり、躁状態になったりといろいろなパターンがあります。私がこの育児ノイローゼを怖いと感じるのは、自殺の危険が高いという印象があるからです。赤ん坊を抱えて孤立し身体的にも疲弊しホルモンバランスの変化などもありかなり心身共に追い詰められているようです。自殺の危険が高いと書きましたが、赤ん坊を道ずれにしての自殺も多いのです。昔の育児は周囲の手助けがいろいろ得られましたが、最近は核家族化の影響で孤立してしまうお母さんが多いことも悪化の原因になっていると思います。ご主人の育児に関する知識のなさもあります。育児というのは初めてやってみるととても大変なものなのですが、出産や育児は周りでありふれている事象なので、何てことはないものだとか、子供は自然に生まれて自然に育っていくんだとか考えているご主人方も時々いるようです。あるいは育児を手伝いたくても仕事が忙しすぎて手伝えないという場合もあります。そういう時にお母さんの体調がすぐれなかったり、赤ん坊の発育が悪かったりすると、お母さんはどんどん参ってしまい追い込まれます。ポイントは一人でがんばらないで出来るだけ助けをかりる事です。お母さんのためというより赤ん坊のためです。一番頼りになるのは実家のお母さんで実家に帰れれば一番いいのですが、時にはそのお母さんが病気だったりという悪い条件が重なる時もあります。とにかく周りの助けを借りるだけ借りて、施設なんかも利用して、何とか一番危険な時期さえ乗り越えればあとは問題なく経過することが多いので、つらくてもあきらめないで欲しいと思います。そうすれば、いつかは、ああ子供がいてよかったと思えるようになるはずです。
2001.10. 1
我々の仕事の中では、うつ病の方も時々来られます。そういう人達の中で毎日がつらくてつらくて死んでしまいたい(企死念慮という)と言う方が時にいます。一番状態の悪い時は誰かが見ていないと何をするか分からない、とても危険だという時期があって、その後周囲の協力も得て何とか危険な時期を乗り越えて治っていくのですが、そういう時に抗うつ剤はとても威力を発揮します。患者さん達は治ってしまうと、けろっとしてしまいそんな危険な状態があったことがうそのようです。でもその時は周囲が見えない状態になっていて、八方ふさがりでとことん追い詰められた感じになっているのです。よくなってから考えてみると周囲がよく見えてきて、そこまで深刻に考えることはなかったのだと分かるのですが、その時はだめなんですね。人間というものはどんなに厳しい状況におかれても、そこに徐々に順応し適応していく能力があるのだと思います。ですから周囲の悪い状況が今後変わりそうも無い、何の打開策も見つからないという追い詰められた状況であっても、その時はもうだめだと思っても、そのまま我慢して様子をみているだけでも、時間がたつと何とかやっていけそうな気になってくるものなのです。ただそこにたどり着くまでにある程度の時間がかかり、そしてその間は精神的にかなりつらいので、その時に抗うつ剤、安定剤を使用することによって精神面の余裕が生まれるのです。最近は不況のせいもあって中高年の自殺が増えているようです。その反面どん底まで落ちても這い上がってくる人もいるのです。自殺した人の中には本当はまだまだ頑張れたはずの無駄死にのような人もいのたではないかと思います。薬をのむのはいやだと言う人もいますが死ぬ気になっているのならそんな事にこだわらなくてもいいのにと思います。ですから自殺する前にとにかく抗うつ剤をのんでみてといいたいのです。どんな状況でも生きていればやり直しができますから。
2001.9.8
心療内科ではストレス関連疾患を扱うわけですが、相談者がストレスのある環境に置かれていて、そのために心身の不調を来たしている場合、ほとんどの場合はそのストレス環境から逃れられない状態になっています。環境を簡単に変えられるならそんなに悩む必要はないわけですから。で、その心身の不調の症状を軽減するためにいろいろ考えるわけですが、特に薬を出す程のことでもないような場合は、そのストレス環境についての話をいろいろと聞いていくことになります。そういう場合どこまでが病気でなくてどこからが病気かというのは、はっきりしませんので、話の内容は人生相談の色彩を帯びてきます。会社の中の人間関係だったり、仕事の悩みだったり、家庭内の嫁姑関係だったり、夫婦関係だったり、親子関係だったり、子育ての悩みだったり、介護の負担だったり、ご近所関係のトラブルであったり、様々ですが、そういう悩み事の相談をしていると雰囲気はまさに人生相談です。解決がとてもできないような悩み事も多いのですが、身近な人には相談できないような悩みの場合、心療内科は安心して相談できる場所ですし、仮に何も解決できなくても口に出して語ることがストレス発散にもなり気持ちの整理にもなるようです。一人で思い悩んでいるうちに段々「うつ」の世界にはまり込んで行くという事もありますので、心の健康診断的に人生相談をしてみてもいいのかもしれません。以前に薬を出すこともなくお姑さんやご主人に関しての愚痴を何年にも渡って聞き続けたこともありますが、それで何とかその人の精神的安定が保たれていたので、それはそれで良かったのかなと思っています。
2001.8.21
我々のような仕事をしている医者にとっては、こういう病気があるということはよく知られていて、全然珍しくもないのですが、時に一般の方達にとっては考えもつかない病気のようです。もし知人に「実は私、電車に乗るととても苦しくなって乗れないの」などと打ち明けられたりすると、大抵の人はそれ程の重大問題ではなく、気の持ちようだとか、神経質過ぎるためだとか、精神的に弱いからだと考えてしまわれる事が多いようです。もしそんな事を聞かされて思わず笑ってしまったりしたら、とても相手を傷つけることになるということも分からない場合が多いようです。一口に電車に乗れない病(仮称)と言っても、原因になる病気は実はいろいろあるのですが、今これからお話しようと思っているのはパニック障害についてです。パニック障害には他にもいろいろな症状が出ますが、電車に乗れないという症状もよくあって(外出恐怖、広場恐怖などとも言いますが)それは、それは本人にとっては深刻な問題なのです。電車や閉鎖的な環境に置かれると激しい動悸や呼吸困難、手足のしびれ、気が遠くなってきて死にそうな恐怖感に襲われるわけですから、それはもう大変です。重要なのはこれらの症状が気のせいで起こっているのではなく実際に体に起こってくる症状なのです。しかしこんなに死にそうな激しい症状なのにもかかわらず病院に行って検査をしても大抵は何の異常も無い(たまたま他の病気が見つかることもあるが)ため周りからは笑われたり馬鹿にされたり、時には(無知な)医者からさえ笑われたりして孤立して一人で苦しむことになります。パニック障害のことを知らない医者は意外と多くて、たまたまそんな医者に運悪く当たってしまうと、症状を悪化させ、長引かせることになるのです。パニック障害は深刻な病気ですが治せる病気です。ただ治療には時間がかかりますので根気が必要です。受診するのは精神科、神経科、心療内科のどれかですが、パニック障害の治療はある程度の経験がないと(いろいろな療法を計画的に組み合わせるので)難しい面があり、また(長く付き合わなくてはいけないため)医師との相性も大事なので幾つか病院を受診して納得できる医師を見つけることも必要かと思います。患者さんが医者を選ぶ時代ですから。
2001.8.9
■天井クレーンのオペレーターの自律神経失調症
精神科医を長くやっているといろいろ特殊な職種の人と出会うことがあるのですが、ビルの建設現場などで高所に設置した天井クレーンのオペレーターという仕事をしている患者さんについては特殊な領域だと思うのですが治療経験が4例(も)あり、それぞれの症状が似通っていたので、とても印象が強いのです。
仕事の特徴としてとても危険を伴う、神経を張り詰めて行う仕事であるという特徴があります。患者さんの症状は動悸、頻脈、呼吸苦、手足のしびれなどの自律神経失調症状なのですが、皆症状が激しく仕事が危険を伴うだけに仕事を続けるのは困難となりました。さらに定年でやめたあとも同じような自律神経失調症状で悩まされ続けました。そのうちの一人はとても優秀なオペレーターで、なんでも天井クレーンの競技会のようなものがあるそうで、そこで何度も優勝経験があるほどの方でしたが、結局地上の仕事に変わることになり優れた技術を無駄にすることになりました。
私なりに考えた症状の起こってきた機序はこうです。非常に危険な仕事なので常に神経を張り詰め緊張して仕事を長年やったために交感神経優位の状態が慢性化し自律神経失調状態になりやすくなったのではないかということです。
同じような症状は長距離トラックの運転手などで高速を降りて料金所を出たとたんに動悸に襲われるというのがありますが、これも緊張がとれた瞬間に自律神経のバランスを崩すということではないかと思います。
常に緊張しながら危険な仕事をしている人たちは同様に自律神経失調症になる危険性が高いといえます。そういう方への私なりの提案ですが、一日の仕事を終える時に危険作業は急には止めないほうがよいのではないかと思います。急激に緊張を解くと自律神経のバランスを崩しやすいと思うのです。そういう時には一番危険な作業から少しずつ危険度が少ない作業に移っていって作業を終わらせることができれば自律神経のバランスを崩しにくいように思います。よくスポーツ選手がやっている体のクールダウンを緊張を解いていく時にもやっていく必要があるのではないかと思います。
こういう患者さんは概して真面目で責任感が強い事が多く、こんな情けないざまになるとは精神的に弱いのだと自分を責めます。でも自律神経失調症になるのは神経が敏感で、きちんとした人がなるのであっていい加減な人はなりませんよ、と私はいつも言っています。
2001.7.24
■コンピューター関係の会社は凄まじい!?
こういう仕事をしていると,いろんな会社の内部事情を知ることになるのですが、コンピュータ関係と言っても様々あって私は専門家ではありませんからよくは分かりませんけれども、そういう分野の患者さんを診ているとそれはもう凄まじいストレスの中で仕事をやっていらっしゃるようですね。たぶんコンピューターシステムを導入している会社(金融関係とか)のサポートなんかをしているようなんですが12時前に家に着けることはほとんどないようで、仕事量も多く顧客の要求もシビアーで患者さんはまず肉体的に疲れきってしまっており、たまの休みは家でバタンキューの状態で家庭を顧みる余裕は全くないようです。別の会社に移っていく方もいらっしゃるようですが、どこもそんなに大差はないようです。会社の中でも社員同志で激しくやりあったりもするみたいで、そういう中でも仕事をバリバリこなして行くスーパーマンみたいな人もいるらしくて、そういう人じゃないと生き残れないようです。精神的にも疲れきって”ああ、自分は何をしているのだろう"と考えてしまうと、もう気持ちが続かなくなってしまうようですね。どこの業種でも同じような事はあるのかもしれませんが特に最近この業種で目立つように感じます。IT関連業種は今花形のようにも言われていますが内情は大変なのでしょうね。患者さんの話を聞いていると本当に同情してしまいます。
2001.7.12
不眠症と一口に言っても様々なタイプ(寝つきが悪い、途中で何回も眼が覚める、朝早く眼が覚める)があり原因もいろいろです。
ですから治療法もそれによって違ってくるので、眠れないからといって、専門医はハイ睡眠薬をどうぞと処方するわけではありません。 不安症やうつ症状からくる不眠もありますので、実際には安定剤を使ったり、抗うつ薬を使った方がよく眠れる場合もあります。 それと睡眠薬は連用していくとやめる時にかなり苦労するので、一番最初にどの薬を使うかという事は非常に重要です。
専門医は先の見通しをたてて薬を選んでいきますが、一般の専門でない先生方は単純に超短時間型の睡眠導入剤を軽い薬だと言って処方する傾向があるようです。 軽いというのは、ある意味では間違ってはいないのですが、そういう風に言われると一般の方はこの薬を飲んでいれば段々不眠症が治って薬から離れられるという風に理解されるようです。 しかし現実には超短時間型の薬ほど連用してしまうとやめにくいのです。仮に連用することになっても量が増えすぎない限り安全は安全なのですが、経済的な面や生活の制約の面から言えば薬なしで眠れるようになるのがベストなのは言うまでもありません。
最初に間違った薬の選択をしてしまうと後でとても苦労することになりますので、たかが不眠と考えずに気軽に専門医(精神科、神経科)を受診してください。
2001.6.24
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